カンボジア内戦は大国のアジア侵略とつながっている

はじめに

この記事は、アジアの近代史までも含めて、カンボジアに及ぼした影響について触れています。以前の記事、ポルポト政権が生まれた背景と合わせてお読みいただければと思います。
 
戦争のない平和な社会であり続けること。

この活動をしていて、いつも、私はそう願っています。

戦争の実感のない世代

先日、ある日本人の若者に出会いました。

彼は30歳で、フィリピンを拠点にビジネス活動をしていました。

戦争の歴史について話題になった時に、彼がほとんど知らないと言ったのを聞いて、今の若者が戦争についていかに無知であるかを再認識しました。

それが彼自身の学びの問題か、教育制度の問題かは別として、諸外国に関わる身ならきちんと事実を知っている必要があります。

私は、この国に足を運んでいただいて、この国の歴史を学んでいただくことには、大きな意味があると思っています。

もちろん、カンボジアに支援が必要な理由が歴史からわかるのですが、さらに言えば、この虐殺の歴史にはそれを産み出した背景があるのです。

虐殺の歴史と戦争との関連性

今回のお若いご支援者様が、トゥールスレン博物館を見学した後、

「これって、戦争の歴史ではないですよね。」

と言いました。

確かにカンボジア国内の虐殺の事実の数々が展示されていて、これを戦争による被害だとは考えることはできないでしょう。

カンボジアでは、1970年代に教師の9割以上が殺されました。

そうまでしなければならなかった背景には何があったのか誰もが疑問に思うはずです。

でも、ポルポト政権が目指したものを考えると必ずわかることがあります。

それは、一国だけの問題の枠に収まりません。

そして、学びが深まれば、朝鮮半島、インドシナ紛争、ベトナム戦争、戦後のアジア諸国の政治的な混乱は、すべて大国が背景に存在した戦争であったという事実に到達できます。

韓国の歴史

例えば、お隣りの韓国の歴史について多くの日本人は正しく認識できていません。

自分の国が正しいと思っているだけでは、前に進むことはできません。

感情的に韓国が嫌いと言っているだけでは、ダメなんです。

私は、元教師だからこそ、多くの日本人に歴史をもう少し深く学ぶ必要があると思っています。

朝鮮半島は、500年以上もの間、李氏朝鮮という国家が統一していました。隣の明や清には、服属するという形で国家体制を樹立していたのです。その歴史を変えたのが日本なのです。1895年に日清戦争で勝利した日本は、朝鮮半島の領有権を獲得し、後の1910年に日韓併合という政策をとりました。

現地に朝鮮総督府を配置し、国そのものを自国の支配の元に置いたのです。

アメリカとの太平洋戦争に突入すると、次第に日本が配下に置いた東南アジア諸国はことごとく奪い返され、アメリカ軍は沖縄に上陸し、日本列島の多くの都市を空爆しました。

そして、日本が1945年に連合国側に無条件降伏したことから、朝鮮半島はソ連側が擁立した金日成を主席とする朝鮮民主主義人民共和国とアメリカを後ろ盾にした李承晩を大統領とした大韓民国の2つの国に分断されました。

この両国は、そもそも抗日パルチザンであった金日成、抗日独立運動の後継者であると憲法に宣言している李承晩、両者とも日本の支配に対抗して勝ったというのが建国精神になっており、国民はそういう反日教育を受けているのです。

大国の支配を受け続けるアジアの国々

しかし、この朝鮮半島も、中国とソ連が背後にいる北とアメリカと国連軍を背後に付けた南との間で1950年から3年間にわたる戦争に突入していきます。

その頃、インドシナ半島でも独立を目指したベトナムと植民地支配を続けるフランスとの間で紛争が起こっていました。

そして、ベトナム戦争でも大国を背景にして、同様の紛争が展開されました。

このベトナム戦争の被害を受けたのが隣国のカンボジアです。

アメリカは自国の利益のためにカンボジアのロンノルを指導者にしてクーデターを起こして、カンボジアに傀儡政権を樹立しました。

大国の後ろ盾を得たロンノル軍は政権を保持し、カンボジア国内に侵入した北ベトナム軍の支援ルートを断つための空爆を容認しました。

この爆撃により、ベトナム国境の何十万人ものカンボジアの人々が亡くなったことは日本人はほとんど知らないことと思います。

それに対して、立ち上がったのがポルポト軍でした。

毛沢東の思想に傾倒したポルポトは、国民の反米感情も味方につけ、勢力を拡大しました。

外国人排斥、共産主義を掲げて、自国の理想とする国家を目指したのです。

その結果が、トゥールスレンであり、キリングフィールドなんです。

博物館は、戦争の一部しか展示していません。

世界のイデオロギーを学ぶこと

カンボジアの歴史を学ぶことは、20世紀の国際イデオロギーを必然的に学ぶことになります。

この国の歴史を契機にして、ぜひ正しい世界史を学んでください。

自国を正当化するだけでなく、相手国の背景をも理解し、事実として受け入れ、その上でどのような関係を築き上げていくべきなのか、今こそ考える必要があります。

一人の力が世界を動かす

ベトナム戦争を終結に向かわせたのは、非人道的な行為に対する国際的な批判と反戦を叫ぶアメリカ国民の力が大きかったと言われています。

今世紀は、ものごとをグローバルに考える必要に迫られている世紀です。

国家という枠組みだけにとどまらず、様々なことを地球規模で捉えることが大切です。

戦争しかり、食糧問題しかり、環境問題しかり・・・。

戦争に勝ちも負けもありません。

産み出されるものは、憎悪と涙だけです。

傷つくのは、同じ血の通った人間なのです。

たった一人の青年のSNSの書き込みが独裁政治の終焉につながった例もあります。

平和と民主主義を掲げて、未来に向けて軍事力を誇るのではなく、品格を誇れるような国を目指していくのが本道です。

そのために、個人でできることに精いっぱい取り組んでいきたいと思うのです。

私の場合には、人に愛を与えることです。