外国人としての中立的な立場

政治的な話題になりますので、先に一言。

まず初めに、外国人である私には選挙権がありません。

そして、支援のためにこの国に滞在しているわけですから、政治的には中立でいなければならないと思っています。

なので、政党についてどちらか一方に寄った考えを持つことはありません。

ただ、外からはなかなかわかり得ない、生活する中でしか見えないであろう民意についてお伝えしようと思います。

 

2013年、野党第一党の救国党を支持する労働者による50万人もの人々が現政権に反対して、首都プノンペンで大規模なデモが行われました。

市内主要通りであるモニボン通りが、人々で埋め尽くされています。

私は、これを自分の目では見ていませんので、想像でしか語れませんが、ものすごい群衆です。

セントラルマーケット周辺も同様です。

治安部隊まで出動したこの騒動後、救国党の党首サムランシー氏は、裁判所から国外追放処分を受け、党は解党に追い込まれました。

 

その後を受けての昨年7月29日の総選挙は、どうだったのでしょう。

ちょうど、この日に私のところに日本からお客さんが来ることになっていました。

一瞬、1975年4月のプノンペン陥落のことが頭によぎりました。

総選挙の日には首都で何が起きるか予想できなかったので、事前にそのことを伝えましたが、すでに旅程を組んでしまったようで、予定通り、来訪するとのことでした。

所属先からは、万が一の時には、バベット経由でホーチミンに退去することまで想定していると言われていました。

当日は自宅待機を言い渡されていましたが、スバイリエン州にいた私は、所属先には内緒で、彼らを迎えにプノンペンにやってきました。

 

2018年7月29日、実際に私の目で見たプノンペン市内中心部は、人が少なくガラガラムードでした。

実際には、与党一党だけの承認選挙でしたので、結果がわかっているようなものでした。

この国の選挙では、投票時に指に特殊インクをつけて印を押すことになっています。

そのインクは、一週間ほど消えません。

二重投票を防止するためです。

投票に行った人々は、こぞってフェイスブックに自分のインクにまみれた指の写真を掲載しました。

つまり、投票に行ったというステータスになるわけです。

インクの付いている指を見せれば、割引になるというお店までありました。

インクのついてない指の持ち主は、投票に行っていない人と後ろ指をさされることになります。(私は、外国人ですからそういう圧力は感じませんが…。)

投票に行かない=現政権に反対の人 と見なされることを恐れ、多くの人々が投票に出向いたというわけです。

結果は、投票率83.02%で与党人民党が120議席すべてを独占しましたが、そのうちの無効票だった8.54%(59万7400票)が無言の抵抗を表しています。

 

いずれにせよ、水面下で民衆の真の声があるのは、現政権も国民もわかっています。

生活が苦しいままでは生きていけない。

これは、労働者の真の叫びです。

フンセン首相は、2017年170$であった工場労働者の最低賃金を2018年には182$に引き上げ、2023年には250$になるだろうと演説で労働者に語り掛けました。

しかし、それ以上に上昇しつつある感のプノンペンの物価。

豚肉1kgが昨年は13,000リエルだったのが、今年は20,000リエルになっています。

首都の物価が上がれば、地方でも同様に上昇していきます。

物価の上昇は、ここで生活しているものにとっては、たとえ外国人であろうとも無関心ではいられません。

このように、カンボジアの経済は、日々変化していて、目が離せません。